「逮捕・勾留」に関するお役立ち情報
勾留理由開示手続きの流れと仕組み
1 勾留理由開示とは
刑事事件で逮捕された場合、引き続き勾留(逮捕に続く身柄拘束)されてしまうことがあります。
勾留に納得がいかない場合、裁判官に勾留される理由を公開の法廷で明らかにしてもらうことができます。
その手続きが、勾留理由開示です。
勾留理由開示では、勾留されている被疑者(被告人)に加え、その弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系親族、兄弟姉妹、その他利害関係人からの請求に基づいて、裁判官がいかなる理由で勾留したかを公判において明らかにします。
この勾留理由の開示は、憲法上の要請により、公開の法廷でしなければならないものとされています。
そして、勾留理由開示の法廷は、原則として被疑者および弁護人が出席しなければ開廷することができません(刑事訴訟法83条3項本文)。
公開の法廷で行われるので親族らは傍聴することができます。
なお、被疑者が勾留されている限り、いつでも勾留理由開示請求をすることができます。
接見禁止がされていても変わりありません。
また、勾留理由開示請求は1回しか行うことができず、請求をした後、さらに勾留延長された場合にも同請求をすることはできません。
ちなみに、勾留理由開示は、あくまで勾留の理由を教えてもらうだけです。
裁判実務では、捜査の密行性から、証拠資料の標目や具体的な内容まで告げるべきでないとされています。
勾留の理由は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること、そして以下の3つの要件のうちいずれかの場合に該当することです。
・住居不定
・罪証隠滅のおそれ
・逃亡のおそれ
なお、勾留を取り消してもらいたい場合は「準抗告」や「勾留取消の申立て」を別途行う必要があります。
2 勾留理由開示請求をするメリットとデメリット
勾留理由の開示は、直接勾留を取り消すための制度ではありませんが、以下のようなメリットがあります。
・準抗告や請求による勾留の取消しなど、被疑者の解放に向けての弁護活動のヒントになり得る
・裁判官に対して勾留の要件について再考する機会を与えて、職権による勾留の取消しのきっかけとなり得る
・勾留延長につき慎重さを期待し得る
・捜査機関、特に検察官の取調べへの牽制になり得る
・特に接見禁止がついている場合、家族との対面の機会にもなる
一方で、公開の法廷ですので、被疑者の姿をさらすことになることはデメリットといえます。
とはいえ、上記の通りメリットが大きく、勾留理由開示の制度を積極的に利用すべきとの意見も強いです。
3 裁判官による勾留理由開示の手続き
最後に、裁判所で行われている開示法廷の流れについて説明します。
勾留開示請求は、書面で裁判所に対して行います。
勾留開示請求を受けた場合、裁判所は5日以内に勾留された理由を明らかにしなければなりません。
以下では、法廷での実際の裁判官の発言を主に紹介することにします。
【開廷宣言】
「ただ今から、令和○○年第○○号勾留理由開示の法廷を開きます」
【人定質問(慣行)】
「被疑者は前に出てください」
ここで、氏名、生年月日、本籍、住居、職業の確認を行います。
【開示宣言】
「これから、被疑者に対する・・・被疑事件について、弁護人から勾留理由開示の請求がありましたので、その理由を開示します。被疑者には、後ほど10分の制限内で意見を述べる機会が与えられますので、これから私の言うことをよく聞いているように。被疑者は、弁護人の前の席に座ってください」
【勾留理由の開示】
「本件の被疑事実は、・・・(被疑事実の読み上げ)・・・というものですが、この事実に関しては、一件記録により被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当の嫌疑が認められます。また、本件は、数人の共謀による計画的な犯行であって、事案の性質、態様から、主として関係人の供述が重要であると考えられるところ、被疑者を釈放すれば、関係人に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があり、法60条1項2号に該当するものと認められます」
【意見陳述】
「それでは、引き続き意見陳述に入ります」
通常は、ここで、弁護人が釈明を求めます。
なお、弁護人、被疑者及び検察官の意見陳述については、10分の制限があります。
【閉廷宣言】
「以上で、本件勾留開示の手続きを終了します」
4 勾留理由開示請求は弁護士にご相談ください
逮捕後勾留されてしまい、勾留されたことに納得がいかないという場合には、その勾留理由を開示してもらうことができます。
しかし、被疑者又は被告人本人が勾留理由開示請求をするのはもとより、公開の法廷で裁判官に釈明を求めたりするのは至難のことです。
そのため、勾留理由開示請求は、その手続きに精通している弁護士に依頼することをおすすめします。
勾留されてしまったという場合は、お早めに弁護士にご相談ください。
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